【ゼミOGと語る 社会問題の”真の”解決方法とは<前編>】

本記事では、元瀧本ゼミ政策分析パートのゼミ生で、現在はコンサルティング会社に勤務されている渡邊みなみさんにインタビューしました。
今回は、ゼミ時代の活動を振り返りつつ、今のお仕事にゼミでの経験がどう活かされているのかをお聞きします。

ゼミで学んだ社会問題解決

ゼミ生:今日はよろしくお願いします。早速ですが、渡邊さんは瀧本ゼミに入る前はどんな活動をされていたのでしょうか。

渡邊:瀧本ゼミに入る前は政策議論など行うサークルに入っていました。しかし、その場で思いついた意見を発表し合うだけだったので、「これでは何の問題も解決することもできない」と不満を持っていました。かと言って、自分もどうやったら社会問題を解決できるのかは分かりませんでした。

ゼミ生:そうだったんですね。瀧本ゼミに入ってから何が変わりましたか?

渡邊:瀧本ゼミの活動を通して、徹底的なリサーチに基づいて構造的に社会問題を解決する、という社会貢献の仕方があると気が付くことができました。

ゼミ生:構造的な問題解決とは、どんな問題解決の仕方を指すのでしょうか?

渡邊:問題の根本的な原因を調べ、そしてそこから本当に効果のある解決策を導出し、実行するという方法です。原因を分析するというのはとても重要で、これをしなければ問題を解決することはできません。例えば、薬物の厳罰化がその一例です。1980年代のアメリカでは、増大する薬物問題に対処すべく、薬物使用を厳罰化する傾向がありました[1]。しかし逮捕者は減るどころか増える一方で、刑務所が薬物事犯者であふれかえる始末でした。なぜなら薬物事犯者の多くは依存症になっているのであり、それを治療しないことには再犯を繰り返してしまうからです。このように、根本的な原因についての対処をしなければ、社会問題を解決することはできません。

ゼミ生:確かにそうですね。渡邊さんはゼミ生時代、防犯カメラの設置による痴漢対策や、ホットスポットパトロールについての調査・分析をなさっていましたね。痴漢対策は以前の記事でもお話いただきましたが、ホットスポットパトロールの方はいかがでしたか。

渡邊:ホットスポットパトロールとは、犯罪抑止のために「ホットスポット」と呼ばれる”犯罪機会の起こりやすい環境”へのパトロールを行う活動を指します。ホットスポットパトロールは海外では導入されているところもあり、エビデンスが豊富であるものの、日本ではあまり普及しておらず、もし導入すればより効果的に犯罪を防止できるのではないか、と考えました。ただ、初回発表は、今思うと改善点がもっとあったと思います。

ゼミ生:今振り返ってみたときに、どのあたりがよくなかったと思いますか?

渡邊:ホットスポットの定義は自治体や論文によって異なるのですが、定義が曖昧なままリサーチを進めてしまったところです。ホットスポットがなぜ発生するのか等の原因分析や、それを解決するための施策の検討が甘くなってしまったと思います。ゼミで発表・議論を行い、他のゼミ生から質問・批判を受けることでこのような改善点に気づくことができました。

ゼミ生:その後発表はどうなりましたか?

渡邊:最終的には、パトロールによって犯罪機会の発生する「環境」をなくすという、犯罪発生原因にアプローチする政策を提案しました。ゼミでの議論・リサーチを通じて、良い政策案にすることができたと思います。

ゼミで培われた力は今の仕事でも役立っている

渡邊:ゼミでの発表から得た教訓は、今の仕事でも活かせています。例えば、この前あるプロジェクトのリサーチの仕事を担当した際には、ホットスポットパトロールの発表の時の教訓がそのまま役に立つことになりました。

ゼミ生:具体的にどのように活かされたのでしょうか。

渡邊:今回のプロジェクトの中では、ハームリダクション[2]についてリサーチする必要があったのですが、このハームリダクションという言葉も、ホットスポットと同様、資料を出している機関によって言葉の使い方が異なり、普遍的な定義が存在しないものでした。
そのため、ハームリダクションの定義が複数あると気が付いた時点で、一旦リサーチを中断し、今後の戦略を立てることにしました。このままハームリダクションについて漠然とリサーチを続ければ、ホットスポットパトロールの発表の時と同じように、漠然としたものになってしまうと確信したからです。

ゼミ生:ゼミ発表の際に得た教訓を活かされたんですね。具体的にはどんな戦略を立てられたのですか?

渡邊:最初にハームリダクションの定義付けを行い、それからプロジェクトの最終目的との関係性を明確にすることにしました。
まず、ハームリダクションの定義として出されている見解を集め、それぞれの見解に共通項目がないかを考えました。複数の見解を比較した結果、ハームリダクションとは、精神作用性がある物質・行動により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを目的とした、法律・政策・プログラムのことを指すことに気付くことができました。次に、プロジェクトの最終目的とハームリダクションの関係性を考えることで、何が必要な情報なのかを考えました。

ゼミ生:漫然とリサーチをするのではなく、まず「必要な情報は何か」を考えられたのですね。

渡邊さん:はい。このように「解くべき問いは何か」を考えるのは、真に社会問題を解決するために必要なスキルだと思います。これもゼミでの活動を通じて学ぶことができました。

ゼミ生:他にゼミでの学びが仕事の役に立った点はありますか。

渡邊さん:アウトプットを作りこみ、それを他人に論理的に説明するための準備が出来ていたことです。出来上がった資料を説明する際、資料のある点について上司から反論される機会がありました。このときも、リサーチの際に自分が立てたロジックに基づいて説明をしたところ、納得していただけたようでした。批判を受けたときに、自分なりにロジックを立てて反論ができたのは、ゼミで経験を積んでいたからだと思います。

ゼミ生:確かに瀧本ゼミでは、自分の発表の途中に、他のゼミ生から質問を受けたり、発表の穴を厳しく指摘されたりすることが日常的にあります。そのため、良い発表をするためには、徹底的な分析と論理的思考が必要になりますね。

ゼミ生:ゼミの発表を通じて得た分析の経験や、論理的に説明するスキルが今のお仕事の中でも役立っているんですね。

渡邊:はい。リサーチから資料作成までに使えたのは非常に短い時間で大変だったのですが、その間自分が投下できるリソースを全て投下して、徹底的なリサーチを行うことが出来ました。結果的にこのプロジェクトでは、外部への資料に、自分が考えたロジックとリサーチ内容がそのまま使われたようです。

ゼミ生:瀧本ゼミで培ったスキルを活かしてバリューを出すことができたのですね。素晴らしいと思います!

渡邊:はい。新卒半年と少ししか経っていない新入社員でも、徹底的なリサーチと考え抜かれたロジックに基づいて良い提案をすることができれば、多くの人を説得することができ、その結果社会を良い方向に動かすこともできるんです。瀧本ゼミで徹底的な分析・発表をこなしていくうちに、それを学ぶことができました。

ゼミ生:お話しいただき、ありがとうごさいました。渡邊さんへのインタビューは、Part2に続きます。次回は、渡邊さんが瀧本ゼミで身につけられた、解決策の戦略的な実行方法についてお聞かせいただきたいと思います。

瀧本ゼミ政策分析パートの活動や、構造的な社会問題解決に関心を持たれた方は、是非社会問題解決ワークショップ」にお越しください。

社会問題解決ワークショップ
~いじめ対策を題材に学ぶ、本当に社会を変えるための問題解決思考~

日時:
12/18(水) 18時30分~19時30分, 12/21(土) 14時30分~15時30分
場所:
早稲田大学 戸山キャンパス37号館Wスペース 37-3

出典

[1]内閣府(2011)「平成23年度『アメリカにおける青少年の薬物乱用対策に関する企画分析』
報告書」https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/drug-h23-us/pdf_index.html
最終閲覧2019年12月1日
[2]ハームリダクションとは:「違法であるかどうかに関わらず,精神作用性のあるドラッグについて,必ずしも その使用量は減ることがなくとも,その使用により生じる健康・社会・経済上の悪 影響を減少させることを主たる目的とする政策,プログラム,そして実践」(Harm Reduction Internationalによる定義)

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瀧本ゼミは、ビジネスと政治という2つの領域へのリサーチを通して、非情で過酷な現代社会を生き抜くための意思決定の方法を学ぶゼミです。現状を分析し、自分なりの仮説に基づいて計画を立て、その計画を実行し、その結果を受けて仮説と計画を修正し、再び実行する。このサイクルは、私たちがこれから現代社会を生き抜いていくために、あらゆる場面で必要とされます。ビジネスと政治という答えのない領域を前にして、各人なりの問題への取り組み方、不定形に動き続ける現実へのアプローチの方法を確立するべく活動しています。議論が好きな方、知的好奇心溢れる方、成長したい方にオススメの自主ゼミです。