同性パートナーシップ制度の導入により人口の社会増が起こる

11月22日(金)、駒場祭で同性パートナーシップ制度などの政策を新宿区長に提言します。参加申し込みはこちらから。

要旨

※こちらのレポート内の分析については、今後先生方からの査読をいただく予定です

先日公開したレポートでは、政策のメリットが不明であることを理由に同性パートナーシップ制度が導入されない事例を紹介したうえで、同制度の導入により自殺率が減少する可能性を明らかにしました。

しかしながら先行研究では、インクルーシブな政策が経済に好影響を与えることが多く指摘されています。例えば、同性愛に寛容である地域は才能を集めたりハイテク産業の成長を促進したりするなどして経済成長を達成するという仮説が提唱されています [1]。このような議論を踏まえて本レポートでは、同性パートナーシップ制度の導入によって人口の社会増が起こるという仮説を検証しました。メカニズムとしては、同制度の導入はパートナーシップ認定を望む同性愛者の方に影響するだけでなく、同制度の導入が多様なマイノリティへの配慮を行う区の姿勢を示すことによって当事者以外も含めた人口流入の増加・人口流出の減少をもたらすというものです。

先行研究及びゼミ独自の分析の結果から、本レポートの結論として同性パートナーシップ制度を導入することにより人口の社会増が発生する可能性を指摘しました。本レポートについては、今後追加の分析と査読を経たうえで最終的な発表を行います。

 

先行研究

性的マイノリティの人口移動に関しては多くの研究が蓄積しています[2]。そのうえで、性的マイノリティの権利を保障する政策が人口流出を減らす効果を持つことが明らかにされています。米国の14年間の統計データを用いたBeaudin(2017)は、同性婚を認めた州では同性婚を認めていない州と比べ、世帯が他の州に転出する確率が有意に低下することを報告しています。特にこの関係性は同性カップルの世帯だけでなく、異性カップルの世帯においても見られています。このメカニズムとして著者は、性的マイノリティ以外にも多様なマイノリティが存在することを指摘したうえで、同性婚を認めることは州のマイノリティに対する一般的な寛容さを示すこととなり、結果として同性婚が全てのマイノリティにプラスの影響を与えたと推論をしています[3]。

類似の結果を示唆する研究は日本にも存在します。住宅情報サイトを用いてLGBT施策の収益性を推定した研究によると、LGBTフレンドリータグを付された住宅では、閲覧数・お問い合わせ数が有意に増加することが明らかにされています[4]。

以上の研究から性的マイノリティに対する寛容な施策を打つことで、性的マイノリティだけでなく多様なマイノリティに正の影響を与え、結果として人口の流出入にプラスの影響が生まれる可能性が示唆されます。

 

独自分析

これらの先行研究を踏まえて瀧本ゼミ政策分析パートでは、同性パートナーシップ制度の導入が人口の社会増をもたらすという仮説のもと、東京都が公表している人口移動に関する統計を用いて独自に分析を行いました。人口、地価公示価格、区固定効果(既に区で実施されていた転入を奨励する政策など)をコントロールしてもなお、制度導入を導入した区では平均して1128人の社会増(p<0.05)が起こったことが明らかになりました。この社会増のメカニズムとしては、主に制度を導入した自治体からの人口流出が減少することが大きく効いています(1009人の流出減少、p<0.01)。なお回帰式などは補足に記載しております。

私たちが用いた統計からは、移動者のうち性的マイノリティの方が占める割合は明らかにできません。しかし先行研究と同様、同性パートナーシップ制度が多様なマイノリティの方々への寛容さを示し、人口の社会増が発生した可能性を指摘できます。今後はさらに詳細なデータを用い、結果の頑健性の検証およびメカニズムについて考察を深めて参ります。

瀧本ゼミ政策分析パートでは今後も多角的な調査を実施し、これら調査結果をもとに同性パートナーシップ制度未導入自治体への政策提言を行い、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指し活動を進めて参ります。

 

補足

メインの分析には以下の回帰式を用いました。iは東京23区、tは2004~2018年です。
社会増減iti1パートナーシップit2log(地価公示価格)it3log(人口)itit
社会増減itはi区のt年一年間における社会増減、パートナーシップitはi区がt年の末時点でパートシップ制度を導入していれば1をとる変数、地価公示価格itはi区t年の地価公示価格のうち住宅地の平均価格、人口itはi区のt年末の人口を意味します。

データについては、社会増減・人口は東京都ホームページの『人口の動き』、同性パートシップ制度導入の有無はOUT JAPANホームページ[5]および各区役所のホームページ、地価公示価格は東京都財務局が公表している『地価公示 区市町村別用途別 平均価格の推移』を用いました。

 

出典:

[1]リチャード・フロリダ. (2009). クリエイティブ都市論: 創造性は居心地のよい場所を求める. ダイヤモンド社.

[2] Cooke, T. J., & Rapino, M. (2007). The migration of partnered gays and lesbians between 1995 and 2000. The Professional Geographer, 59(3), 285-297.

[3] Beaudin, L. (2017). Marriage equality and interstate migration. Applied Economics, 49(30), 2956-2973.

[4] 田原万悠子, 長谷川泰大, 古庄涼花, 村井千恵, 森峻人, & 星野崇宏. (2019). Propensity Score 及び Causal Tree を用いた LGBT 施策と収益の因果推定. In 人工知能学会全国大会論文集 一般社団法人 人工知能学会 (pp. 4O3J703-4O3J703). 一般社団法人 人工知能学会.

[5]OUT JAPAN HP.(2019). 全国9自治体で同性パートナーシップ証明制度がスタート,https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/news/2019/4/2.html (最終アクセス:2019年11月20日)

 

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