五月祭ゲストにインタビュー!-文京区長成澤廣修氏の重視する「基礎自治体の持続可能性」とは?-

今回弊団体では東大の地元である文京区の成澤廣修区長を五月祭にお呼びする運びとなりました。当記事では、成澤区長に文京区長になるまでにどのような意思決定を経てきたのか、区政に携わる中で重視していることなどについてインタビューを行いました。

五月祭企画の申し込みはこちらから!

 

文京区長・成澤廣修氏にインタビューを行いました!

ゼミ生:今回はインタビューを引き受けていただきありがとうございます。成澤区長は当時最年少の25歳で文京区議に当選し、その後現在に至るまで文京区で活躍していらっしゃいますよね。2010年には初の育休取得でも話題になりました。まずは成澤区長が区議、更には区長になることを決心した経緯を詳しくお聞かせ願えますか?

成澤:自分は中学生の頃、文京区の本郷三丁目に住んでいて、その頃は職住近接の町で地域のコミュニティが出来ていたんですよ。だけれど、当時業務地化が進んで地価が高くなって、おじいちゃん・おばあちゃんが一人暮らししているような土地は売ってしまった方がいいということで、息子さんたちの住む場所に周りに住んでいたおばあちゃん達が引き取られていった。そうなると、元々おばあちゃんたちは職住近接で隣近所のコミュニティがあったのに、70歳を超えて新しい場所で友達ができるわけでもないから引きこもりがちになって、3年から5年で亡くなったよって話を聞きました。一方で、そうやって売られた土地とかそこに建てられたビルとかはバブルが弾けると一気に価値が下落して、結局銀行に土地ごと全部取られる。そういう、人が住めなくなるような街づくりでいいのかな、と感じたのが政治というものに興味を持つきっかけでした。こういう原体験があって、僕が区議をやろうと思った理由、仕事の原点は疲弊している地域をどうにかして食い止め、回復させる、ということ。政治を志すと、大蔵省に行ってある程度まで行って地元に帰って国会議員になって、というのがよくある流れだけれど、僕が最初区議になった時に思ったのが文京区長になることで、国会議員になりたいと思ったことは一回もない。

ゼミ生:なるほど確かに行政というとどうしても中央に目が向きがちで、あまり注目されることがない地方自治ですが、実は一人一人の生活には一番与える影響力が大きいという面はあるかと思います。我々瀧本ゼミでも効果的な政策は基礎自治体に提案して実現させていくことが一番良い方法だと考えています。その点、成澤先生はこども宅食やネウボラ事業といった、地方自治体ならではの政策を実行し、様々な成果を上げていらっしゃいます行政課題の解決の際や常に意識していることなどがあればお聞きしたいです。

成澤区長(右)に面会するゼミ生(左)

成澤:今でいえば持続可能性。文京区はバブル崩壊後、平成10年頃を底に人口が流出していったことがあって、どうやったら文京区を選んで住んでいただき続けられるのかということを重視している。かつては新婚さんへの家賃補助をやったけれど、助成期間が終わるとみんな出ていってしまったため、いかに持続可能なサービスを提供し続けられるかが問題だと思っている。基礎自治体としては一番サービスが多いのは子どもと高齢者。例えば0歳児教育をしようとすれば30~40万かかる。しかし、30万円の税金を納めている人はなかなかいない。ということは、実際にこれを支えているのは生産年齢人口の人々で、そういった納める税金より帰ってくるリターンのほうが少ない人たちを多く抱えることができれば、必要なサービスを拡大することができる。なので、中堅ファミリー世帯を中心に人口を拡大するのが大事。そしてそのための方法が子育て支援サービスだと思ったんです。
出産でいえば、タイミングさえ間違えなければどこでも産める。今、地方に行くとさ、里帰り出産お断りってある。産婦人科さん宿直激しいし、出産自体やめさせているところがあったり、産んでから帰ってこいっていう中で、選べるというのは凄い。そういう面では、文京区は東大もあるし医科歯科大もある。地方では病院不足で里帰り出産を断っている所もある中、文京区では病院を選べる。それと、教育水準の高さという面では、国立の付属校が多いということで教育熱心な人が入ってきてくれる。
実際、稼いでいる人、稼いでると言っても一億円とかじゃなくて、お父さん弁護士、奥さん公認会計士とかいう人たち、そういう人が文京区の子どもをターゲットとした政策を評価して、ここに住むようになってもらっている。おかげさまで刑法犯は23区で一番少なかったし、火災の発生件数も昨年は一番少なくって、安全安心の街なんだよ。で、なにかって言えば、急性虫垂炎で担ぎ込まれたときに、近所の町医者さんに「成澤さん、どこで切る?」って言われて。の土地が持っているポテンシャルを活かして、自治体の回復可能性を高めてくれる中堅ファミリー世帯を増やそうと考えている。

文京区は東京大学医学部附属病院をはじめとして地域の医療が充実している[1]。

ゼミ生:なるほど、子育て支援政策で人を呼び込もうということですね。実際、ゼミ内でも効果的な政策を考える上で重要視しています。これまで文京区では具体的にどのような子育て政策に取り組まれてきたのでしょうか?

成澤:例えば妊産婦避難所がある。大災害が起きた時、これまでだと家がなくなったら避難所行くわけだ。でも電気もガスもないまっくらな避難所で、不眠に悩む高齢者もいれば生まれたばかりの赤ちゃんもいるかもしれない。赤ちゃんはそりゃ泣くよね、泣くのが仕事だし。でもそうしたらおじいちゃんが、普段は優しい人でも、もしかしたら「うるさい、黙らせろ」って言ってしまうかもしれない。極限状態だし、あり得るかもしれない。だから、震災の時に子供連れの方はここにはいられないっていって車の中で過ごして、エコノミー症候群とかになってしまうことも有り得る。だったら最初から別の避難所を設けて、備蓄もそこに置けばよいという考えで妊産婦避難所を作った。そうすると、それはいいって賛同して真似してくれるところがでてきてくれた。基礎自治体のいいところ、醍醐味って、文京区でやって成功したことを横展開してくれること。全く同じは無理でも、それぞれがカスタマイズしながら横展開していただけたらというのは心掛けている。

ゼミ生:成澤区長は「こども宅食」をはじめとしてNPOや企業など区以外の組織と協働して政策を進めることに意欲的ですが、区以外と関わって何かする際、行政として重視しているところや今後重視しておこうと考えていることはなにかありますか?

成澤:自分としては、公的セクターですべてをまかなえる時代はもう終わったという考えを持っている。すべてを職員の手でやるには時間もお金も足らないし、民間の方が技術を持っていることが往々にしてある。一つに、ソサエティ5.0[2]。自動運転やAI家電といったソサエティ5.0で現れるものは基礎自治体と親和性が高い。しかし基礎自治体にはそんなノウハウがどこにもない。そこで東大の先生に連絡しようというような形で、大学や企業などと関わっていくのが良いと考えている。
また、基礎自治体でもグローバルなものの見方が必要になってきていると思っている。例えばSDGs[3]。政府が達成に向けて動かなければいけないのだけれど、結局それに向けて努力するのは基礎自治体だと思う。住民と実際に接しているのは基礎自治体。なので、目標に向けて、今の政策の優先順位を並べ替えることはやらないといけないと思う。

ゼミ生:ありがとうございます。新たな時代に対応する基礎自治体のポテンシャルを感じました。

瀧本ゼミでも、これまでもつくば副市長や、河野太郎氏への政策提言を行って参りました。今回の五月祭の講演会では、より地元に目を向け、成澤区長と政策導入の可否を議論していきます。

 

出典

[1] 写真は東京大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科トップページより引用 http://www.u-tokyo-hemat.com/
[2] サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
[3] 持続可能な開発:「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため,2030年を年限とする17の 国際目標のこと https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/about_sdgs_summary.pdf

ぜひフォローください!

瀧本ゼミの活動が気になる方へ

瀧本ゼミは、ビジネスと政治という2つの領域へのリサーチを通して、非情で過酷な現代社会を生き抜くための意思決定の方法を学ぶゼミです。現状を分析し、自分なりの仮説に基づいて計画を立て、その計画を実行し、その結果を受けて仮説と計画を修正し、再び実行する。このサイクルは、私たちがこれから現代社会を生き抜いていくために、あらゆる場面で必要とされます。ビジネスと政治という答えのない領域を前にして、各人なりの問題への取り組み方、不定形に動き続ける現実へのアプローチの方法を確立するべく活動しています。議論が好きな方、知的好奇心溢れる方、成長したい方にオススメの自主ゼミです。