瀧本ゼミOBに聞く 学生の考えた政策案が実際に実現するまでの道

注:この記事は2018年5月に公開したインタビュー記事です。五月祭の記事もぜひご覧ください。

インタビュアー:今日は、社会人としてベンチャー企業に勤め、ときにはゼミに顔を出しフィードバックを下さる3期生の大月さんに、なぜ瀧本ゼミは学生主体で本当に政策を実現させることができるのかを伺ってみます。大月さん、宜しくお願いします。

(社会人になってからも、ゼミ生へのフィードバックを積極的に行うTゼミOBの大月さん)

大月:宜しくお願いします。

インタビュアー:大月さんは3期生で、大学3年生で、瀧本ゼミに入られたと思うのですが、その際、どのようにして「まだ世間で注目されてはいないが、実は解決に値する重要な問題」=イシューを発見されましたか?

大月:当時の瀧本ゼミはイシュー毎に幾つかプロジェクトが走っていて、既存のプロジェクトのどこかに入ろう、身近でとっつきやすいのが良いかなと思い、消火器を選びました。
最初は、消火器って押し売り販売が来たりすることもあるし、防災訓練で使ったりすることもあるが、意味があるのかなぁ、という考えくらいしか持っていませんでした。
まず、消火器の有効性に関する文献リサーチを始めたんですが、まともな文献がないんです。でもどうやら、初期消火をやっている割合が少なくて、初期消火を行っていれば、火災の規模が小さくなる傾向があるという事が消防庁のデータでありました。また、日本で一番消火器について研究している人が東京理科大にいることが分かり、メールを出してみました。

インタビュアー:なるほど、実際に専門の方に会って、実践の方法を一緒に探ったという事ですね。

大月:はい。その先生は防火に関する研究をずっとやっている先生なんですけど、会った時に話を聞いてみると、その分野は予算のつきにくい分野であり、中々政策が変わらないということを仰っていました。
しかし、その中でも、今から振り返るとやや熱意がすぎるメールにも、先生は大変喜んで下さりました。自分たちも可能な限り調査を深めていくとともに、先生と何度もお会いする中で、先生がしていらっしゃる研究とか、知識とか、現在の消火器の課題などを教えて頂きました。

インタビュアー:そういう中で、活動が面白くなってきたという感じですか?

大月:そうですね。後は実践の中で必要な知識がどんどん蓄えられるというのも面白かったですし、知見がないなら作らなければいけないという所も面白かったです
実際に、政策を作るためにはエビデンスがないと世の中動かないという指摘も頂いたので、我々自身でエビデンスを作るという所から、やろうと動き始めました。というのも、火事には初期消火が重要だという事は分かっていましたが、消火器が初期消火に有効か、日本でも本当にそうなのか、という所を実証している人がいなかったんです。
そこで、先ほどいった先生にお願いして、消防庁で消火の政策を担当している部署にまずそういうデータがないか、ヒアリングに行きました。その先生はその分野では第一人者だったので、消防庁の方では偉い人がずらりと出てきて、僕も含めて、プロジェクトのメンバーは正直ちょっとびびっていました(笑) 

インタビュアー:なるほど。本当に積極的に動かれていたんですね。そこで何かの政策を提案したのですか?

大月:色々お話したりもしましたが、そう簡単には変わらないという事が分かりました。
結局、役所の人は外部から学生がいきなり提案や相談に行って、真剣に相手にしてくれるという訳でもないし、「世の中を変える」と言うのは簡単ですが、本当に変えるのは、これは当たり前なんですけれども、とてもハードルが高いものだと身に沁みて感じました。

インタビュアー:私も今、「アレルギーを予防する」というプロジェクトに関わっており、一度行政に提案しに行きましたがすんなりと受け入れてもらうことはできませんでしたね…。 

大月:そうなんですよね。どうしても始めたばかりだと、「なんでもできる!」って思いがちですがやってみるとものすごい困難が多いです。
でも、多分、ほとんどの学生はここまでやらないから挫折を味わうこともないんだなとも思っています。
だから、僕はここで終わってしまうと、自分が一番苦手だったただの「意識高い系(笑)」で終わってしまうと思って、何とかしてやろうと決意しました。

ゼミ生:そこで、これまでの方針を転換して、論文執筆という方法で消火器の有効性を証明する事に挑戦しようと思ったわけですね?

大月:そうですね。しかし、実はこれについても公開されているデータが中々なくて…。かなりここで行き詰まりました。また壁にぶち当たった感じです。

ただ、リサーチする中で、消火器の家への設置率のデータや初期消火における火事の事後報告に関する資料は公開されていたので、それらのデータは原票があるのではないかと推察しました。案の定、消防庁の統計を調べたらそういうデータは存在しているようでした。
そこで、何をしたら良いのか、他のプロジェクトのゼミ生に相談した所、情報公開法という法律があって、きちんと手続きを踏めば、公開される資料なのではないかと助言を受けました。
そのアドバイスを参考にして、自分達は役所に行って資料を準備して、開示請求を行いました。

ただの一学生が役所に対して情報公開請求したという事で相手側もびっくりされたかもしれませんが、きちんと対応してもらえました。
しかも、資料自体は整理されていて大量のデータだったので、これは宝の山だなぁと(笑)

インタビュアー:では、そのデータを解析して、結果を出したという事ですね?

大月:はい。必死の統計分析の結果、消火器の設置や利用によって、火事の規模や被害が小さくなるという事が分かりました。
これは、消火器の設置が火事の被害を減らす上で有効であることが、統計的・科学的には日本で初めて証明されたことを意味します。

先ほどの先生は凄く喜んで下さって、この件を学会で発表することになりました。
先生にはすごくお世話になっていたので、私もちょっとした恩返しができてよかったかなと思っています。

(明治大学HPより)

インタビュアー:本当に困難の連続でしたね…。私のプロジェクトもいつ成果が出るのか不安になってきました。 

大月:大丈夫ですよ(笑)
インタビュアーさんがやっているアレルギー予防のプロジェクトは今度の五月祭講演会の場で毛塚副市長に提案するんですよね?良いプレゼンができればきっと成功すると思います!

2018年の東大五月祭にはたくさんの方にお越しいただき、会場は満員御礼となりました。

(2018/09/30注記:上の写真にある、瀧本ゼミ&日本政策創造基盤の講演会では、科学的根拠に基づいた政策をつくば市の毛塚副市長に提案しました。)

インタビュアー:ありがとうございます!ちなみに、大月さんの消火器プロジェクト以外にも過去成功したものはあるんでしたっけ?

大月:そうですね、瀧本ゼミで一番成功したといえるのはAEDプロジェクトだと思います。このプロジェクトは年間 7 万人以上発生している病院外心停止に対して、AED の配備や使用方法の普及・心肺蘇生の普及により、多くの人たちを救うためのプロジェクトです。私たちが提案した AED の実施率を上げる為の政策・施策・事業が幾つかの先進的な自治体に受け入れられ、千葉県では条例が制定されるまでになりました。
さらに、自閉症プロジェクトや地震火災プロジェクトの活動が、地方議会を動かしたこともありました。

 インタビュアー:さきほど大月さんは、一介の学生が提案に行ってもそう簡単には受け付けてもらえないとおっしゃっていましたが、それでも学生のうちに成果を出せるのには何か秘訣があるでしょうか?

大月:一つキーになるのは「徹底的なリサーチ」です。どのプロジェクトにしても、成功したものはものすごい量のリサーチをしています。だから、政治家や行政に提案に行っても、ちゃんとエビデンスを示すことができて信用を得ることができます。これが「EBPM(evidence based policy making)」の強みですよね。

EBPMとはEvidence-Based Policy Makingの略語であり、真に効果のある政策を実施すべく「科学的な根拠に基づき政策立案を行う」というアイデアです。これは英米の政策立案の主流となっており、日本も導入を目指す流れが加速しています。このようにEBPMは、政策立案における世界的トレンドであり、そうした意味で、「学問的な知見を社会に生かす」術を学ぶことは、今後政策分野や学術分野を志す学生にとって必須の思考法になります。

大月:それから色んなネットワークを駆使して、時には専門家とタッグを組みながら進めていくところも重要です。
情報公開法を教えてくれたのは他のゼミ生ですし、論文執筆のアドバイスをくださったのは瀧本哲史先生でした。それから僕たちだけで論文をパブリッシュすることは恐らくできなかったわけで、東京理科大の先生にお力添え頂けたからこその成果だと思っています。

 インタビュアー:「徹底的なリサーチ」と「ネットワーク」、これを忘れずに頑張ることが重要なんですね!
最後に、五月祭でどの企画へ行こうか迷っている学生の方へ一言お願いします。

大月:五月祭はもともと「学術の祭典」なんですよね。
工学系研究科などは様々な研究成果を披露していて目立っていますが、社会科学系はあまり目にしない印象です。
「学術の祭典」にふさわしいアカデミックな議論と、議論だけで終わらない「学生の提案が実現する」ダイナミズムを味わえる数少ない機会だと思います。

僕もたまたま友人に誘われて瀧本ゼミに出会えたわけで、「ふとしたきっかけ」から得るものは多いはずです。
今後瀧本ゼミや日本政策創造基盤に関わるつもりはなくても、何かのインスピレーションを得られる、そんな講演会になると思うので是非いらっしゃってください!

 インタビュアー:大月さん、この度はありがとうございました!

 

瀧本ゼミ政策分析パート・日本政策創造基盤は今年も五月祭において講演会を企画しております。

一昨年はNPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹氏・昨年は現外務大臣の河野太郎氏をお招きした本企画ですが、今年は財務省官僚をご退官後、つくば市の副市長につくば市史上最年少で就任された毛塚幹人氏をお招きします。今年の企画では、講演会のその場で学生が毛塚副市長に政策案をプレゼンし、そのつくば市での導入可能性について判断していただきます。当日は、大月さんがおっしゃっていた、「AEDプロジェクト」と「自閉症プロジェクト」も登場します! 

プロジェクトメンバーの提案は、つくば市の毛塚副市長に受け入れられるのでしょうか・・・?プロジェクト詳細と当日の結果をご覧になりたい方は以下のフォームから講演会参加登録をお願い致します。

事前予約はこちらからお願い致します→

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五月祭特設サイト:http://tsemi-mayfes-18.strikingly.com/

秋新歓を実施しています

瀧本ゼミ政策分析パートは、2018年秋から活動に参加する学生を募集しています。詳しくはこちら(新歓情報)まで。

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