火災対策の原因分析から見えた意外な弱点

この記事では、過去に瀧本ゼミで活動していた「消火器プロジェクト」をご紹介します!
仮説を立てて検証のためにどんな情報が必要なのかを考え、実際に検証する。エビデンスとロジックに基づく議論がどのように形作られるかをお伝えします。

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「消火器プロジェクト」とは

消火器プロジェクトは、⽊造密集住宅が主流の⽇本において根強い問題となっている⽕災の被害を減らすため、特に被害の⼤きい⼾建住宅⽕災に対応する⼿段として消⽕器の普及を推進するプロジェクトです。

日本における火災は年間4万-5万件台でこの10年間推移していて、その被害は年間死傷者約1万人、額にしておよそ1000億円にも及ぶのが現状です。火災には建物、車両、林野などがありますが、建物火災の占める割合は圧倒的です。火災件数では58%、死者数では77%、負傷者数においては実に86%が建物火災です。さらに建物火災の内訳をみてみると、一般住宅(戸建て)が最も多数を占めています。したがって、戸建住宅の火災対策を行うことで火災被害の大きな低減を見込めます。

火災対策のボトルネックを分析

戸建住宅の火災対策手段のボトルネックを分析すると、火災に対するアプローチには市民側のものと消防側のものとがあります。まず市民側アプローチとして挙げられるのは火災の進行順に「早期発見」「早期通報」「初期消火」であり、消防側アプローチとして「消防士・消火設備の質」「消防士・消火設備の量」があります。

これらのどれがボトルネックなのでしょうか。「早期発見」は戸建住宅の火災では78%が成功しています。「早期通報」は87%のケースでできていました。「消防の質」については住宅火災の90%近くが15分以内に放水できていることから問題はないといえます。「消防の量」は消防職員常備化による人口カバー率99.8%という数字がその充実ぶりを示しています。

しかし、適切な消火器具による「初期消火」ができたのは戸建住宅火災のわずか27%でした。ここから、戸建住宅の火災対策手段のボトルネックは初期消火である、ということが示唆されます。

初期消火が火災対策のボトルネックとなっている理由とは

では、一般に有効であるはずの消火器が初期消火に至らないのはなぜでしょうか。消火器に問題があるとすれば、それは「設置」と「作動」に分類することができます。設置の問題は「設置している家庭が少ないのではないか」、作動の問題は「設置された消火器が正常に運転するか」「実は消火器は初期消火に有効ではないのではないか」の計3つにわけられます。
ここで、消火器は国の検定基準を通過したものしか販売されていないことから、消火器の作動については問題がないことがわかります。

では家庭の消火器の設置率はどうでしょうか。一般家庭の消火器保有率は41%です(日本消火器工業会, 2016)。そのうち34%は使用期限が切れていました。つまり、使用期限内の消火器を設置している家庭は全体の30%に満たないことになります。

以上の分析の結果、適切に使える消火器の設置率の低さこそ戸建住宅火災の初期消火を阻んでいる原因であるとの仮説が導かれました。

もれなくだぶりなく原因を分析し、OSINTによるリサーチでボトルネックを特定した.

消火器の設置は初期消火に繋がるか

そこで、このプロジェクトでは戸建住宅の初期消火において最も有効な手段である消火器を普及させることで火災損害額低減を目指しています。
消火器の初期消火効果の実証は未踏の分野であり、⽂献のリサーチで得られる情報は限定的であったことから、プロジェクトは有識者などに直接ヒアリングを⾏うことでより実際的な情報に触れることにも取り組みました。東京大学や東京理科大学の専門家の方々や、総務省消防庁および東京消防庁、消火器工業会や国内最大手消火器メーカーへのヒアリングを行い、良好なネットワークを構築してきました。

消火器プロジェクトのこれまでの顕著な成果としては、消火器の初期消火効果についての定量的実証研究の学会での発表(明治大学HP)が挙げられます。東京理科大学の教授の方々にご協力いただきつつ、日本火災学会で消火器の被害低減効果に関する発表を行い、12万件の住宅火災データにもとづき、消火器の使用が火災損害額を1/3程度まで低減したことを定量的に証明しました。

瀧本ゼミが問題解決に向けてとる手段は、政策提言やロビイングだけではありません。時にはアカデミックなアプローチも取りながら、解決のための最適解を徹底的に考え、実行に移します。

消火器プロジェクトに取り組み、エビデンスを探した末に、情報公開請求をして手に入れた12万件の莫大なデータを統計分析することでついには学会発表までこぎつけた、大月天道さんのインタビューも公開されていますので、そちらもぜひご覧ください!

(この記事は、過去に瀧本ゼミで活動していたプロジェクトの概要です。各データは最新のものでない場合がありますが、ご了承ください。)

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